2020年2月16日日曜日

11月例会報告   2019/11/24


 参加者は4名で さくまゆみこさんの本を読み合いました。


「おいしそうなバレエ」 ジェイムズ・マーシャル:文 モーリス・センダック:絵 

さくまゆみこ:訳  徳間書店


 センダックが亡くなった友だちの文章に絵を描き仕上げた絵本である。おおかみがぶたに出会い、食べようとして劇場に入る。そしてバレエを楽しみ、最初の目的を忘れてしまっている。おおかみは周りにもたくさんいるぶたには目を向けず、どうしてプリマドンナのぶたを食べようとしたのか?おおかみの家の大家さんはなぜ人間なのか?などを話し合いつつ、絵を読むことを楽しんだ。特に絵に描き込まれている文字の面白さに、訳をされたさくまさんも一部原文のままにしている。センダックの遊び心を読み手も楽しみたい。


「ひとりひとりのやさしさ」  ジャクリーン・ウッドソン:文 E・B・ルイス:絵

さくまゆみこ:訳 BL出版



 主人公のわたしクローイはアフリカ系のアメリカ人と思われる。彼女のクラスにマヤが転入してくる。彼女への無視という行動とそれを悔やむ姿が描かれている。今回クローイ自身の置かれた立場に目を向けた。「そのとし、わたしのなかよしは、ケンドラとソフィーだった」と書かれている。高学年の女子に見られるグループ、そこになんとか入れてもらいながらグループのメンバーの顔色をうかがいながら過ごすクローイの思いが伝わる。そのクローイから見たマヤは一人でもいられる強さを持っており、それがうらやましかったのではないだろうか。担任の先生からの話に対してマヤへの行動への痛みを感じない「友だち」と違ってクローイは何を思っていたのか。単にマヤへのいじめだけではなく、クローイ自身の置かれた立場も思うと「後悔」というには複雑な思いだったと想像できる。単にいじめをダメというだけではないものを感じて欲しい絵本だ。


「エンザロ村のかまど」

 さくまゆみこ:文 沢田としき:絵   福音館書店


月刊たくさんのふしぎ(2004年)たくさんのふしぎ傑作集(2009年)

 アフリカでかまどやぞうりの作り方を教え、生活の支援をする話が書かれている。日本の遠野の知恵がアフリカに渡り、現地の人が自分たちで継続していけるよう工夫する様子に「支援」について考えさせられた。上から何かを与えるのではなく、現地の人たちが活かしていけるものを伝えている。学校の子どもたちがぞうり作りに興味を持ち、学校で作り始めた様子は楽しく見えた。絵を読むことも楽しく、現地の人たちの暮らしが伝わる。


単行本「風をつかまえた少年」 田口俊樹:訳 文藝春秋社

絵本「風をつかまえたウィリアム」 さくまゆみこ:訳 さ・え・ら書房


 ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー:両書の著者

 絵本ではウィリアムのあきらめない気持ちとあるもので工夫する力が描かれている。単行本では詳細な事実が書かれている。現地での貧富の差や腐敗した政治家の姿が今の日本とかぶってくる。その中で生活を変えようとするウィリアムを支えるのは友だちとアメリカの支援でできた図書館とそこにいる司書だ。3冊の本と廃棄場の物で風力発電機を作ったウィリアムは14歳。日本の中学生との違いについて考えさせられた。また単行本や映画に描かれたマラウイの現実をおとなには知ってもらいたいと思う。


上記2冊から子どもたちの学ぶことへの意欲が感じられ、学ぶことが生活の向上につながっている。子どもは本来学ぶことが好きだと思うが、日本の子どもたちが学校で学ぶ楽しさを感じられなくなったのはなぜだろう。またその場にある物を活かす力にも驚かされる。後進国・発展途上国と言われることもあるが、私たちよりも持っているものの豊かさに触れた。


「ホーキング博士のスペースアドベンチャー」シリーズ 

スティーブン・ホーキング、ルーシー・ホーキング:著 さくまゆみこ:訳  岩崎書店


残念ながらレポートはなかったが、冒険物としてのおもしろさと、専門知識の深さがあるからこそ子どもに分かりやすく書かれた宇宙の知識が興味深く読めたことを確認した。次回の例会で簡単なレポート報告の予定。