2020年2月16日日曜日

子どもの読書と教育を考える会  例会案内(3月~6月)


 例会案内(3月~6月)のダウンロードはこちら(PDF)



『鹿の王 水底の橋』を読む
2020年  3月14日(土)13:00~
 『鹿の王 水底の橋』上橋菜穂子著 (角川書店)


 本屋大賞を受賞した『鹿の王』の続編として出版された本です。「医療」という視点で読んでいきたいと考えています。「守人シリーズ」や『獣の奏者』なども同じ視点で触れてみたいです。ファンタジーが苦手な方もおられるようですが、この機会に上橋作品を読んでみてはいかがでしょうか。

 参考資料として 『ほの暗い永久(とわ)から出でて』(文藝春秋)をおすすめします。




先住民族について考える

2020年  4月11日(土)13:00~
 『世界と日本の先住民族』 上村英明:著 岩波ブックレット 
1992年発刊


 12月例会の『クマと少年』1月例会の『ぼくはマサイ』2月例会の『北のくにのイービク』の読書会を通して「先住民」について考えてきました。最後に児童書ではありませんが『世界と日本の先住民族』を基に「先住民」についての学びを深めたいと思います。


新刊書研究会

2020年5月23日(土)13:00~ 堺市立南図書館で行います。


講師は大阪国際児童文学振興財団の土居安子さんです。2019年に出版された児童書についてお話をお聞きします。実際に本を見ることも出来ます。
 会場の場所についてはインターネットなどでご確認下さい。
 参加申し込み・お問い合わせはメールかFAXでお願いします。





2019年新刊書を読む

2020年6月13日(土) 7月11日(土) 8月8日(土) 13:00~

 5月例会で紹介された本から一冊ずつ選んで読み合いたいと思います。本の詳細については5月例会以降にホームページでお知らせします。

9月12日(土)午後に 正置友子氏の講演を予定しています。会場は未定(堺市内を予定)です。

会場 堺市・新金岡市民センター2階


地下鉄新金岡駅下車出口④を出て歩道橋を渡って直進
徒歩3~5分。専用駐車場はありませんので、近くの有料駐車場をご利用下さい。

参加申し込み・お問い合わせ先
  メール  kodokukyo1987@ares.eonet.ne.jp (担当 岸)
  FAX  072-252-9757 (担当 一塚)

12月例会、1月例会、2月例会のご報告


12月例会

『クマと少年』あべ弘士:著 (ブロンズ新社)
 アイヌ独特の儀式などの文化を知ることになりました。同時に江戸時代からの開拓で迫害され差別されてきた歴史にも目を向けざるをえませんでした。同化政策を推し進めてきた歴史の中で生まれた「北海道旧土人保護法」があり、それがごく最近まで生きていたことに驚かされました。そして今もなお政府は差別と貧困をなくすための政策を進めることはなく、これまでの政策を反省して是正しようとしない政府の姿勢は今の韓国との関係にも共通する課題が見えてきます。あべ弘士さんの絵を読んでいく作業も楽しかったです

 参考資料

   『アイヌ語が国会に響く 萱野茂・アイヌ文化講座』

    萱野茂 他8名:著  1997年 草風館


  『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』

    中川裕:著  2019年 集英社

   『アイヌ民族:歴史と現在 ―未来を共に生きるために―』

    編集・執筆:小・中学生向け副読本編集委員会 阿部一司 他8名

    2008年3月 初版 第一刷

    2018年8月 第八版 第一刷

    発行:公益財団法人 アイヌ民族文化財団

 1月例会

『ぼくはマサイーライオンの大地で育つー』

ジョセフ・レマンライ・レクトン:著 さくまゆみこ:訳 (さ・え・ら書房)


ケニアのマサイ族としての誇りを持ちつつ生きる姿が描かれています。今まで知らなかったマサイの文化

に触れることができる作品です。他国家の侵略という歴史はなかったようですが、欧米化の波は避けられないようです。ケニア政府の政策などは不明ですが 主人公レクトンの通った学校はアメリカからの支援が見られます。またレクトン自身は大統領からの支援を受けられるなどの運の良さもあり、「学校」での学びが彼の生活を変えていきます。マサイの誇りを持ちつつ変わっていくレクトン。文字という文明とことばでの語りという文化。地球が自転していることさえ知らない母とレクトンのギャップ。少数民族は政府の支援を受けるためには政策に合わせた生活を強いられる。モンゴル同様遊牧が否定され定住を強いられる。日本でも生活の変化のスピードが速くなっている。

原始的といわれる人々に対して「上から目線」で支援することも見られがちだが、彼らの文化を尊重しつつの支援を考えさせられた

2月例会

『北のはてのイービク』 ピーパルク・フロイゲン:著 野村滋:訳 (岩波少年文庫) 

共にセイウチ狩りに出かけた父が亡くなり、貧困と飢えの生活が始まる。その後の長男イービクの家族を食べさせるための奮闘を描いている。エスキモーの生き方の厳しさを知り、そこで生きる意味や喜びを考えさせられた。その厳しさゆえに親類・縁者という集団としての支え合いが見られます。土地などの「所有」という概念はなく、みんなで分かち合いながらの生活はアイヌ民族やマサイ族の生活とも通じるものを感じます。

  カナダ政府は、1999年差別政策を謝罪し、ヌナブット準州を創設している。それに比べ日本政府のアイヌ民族への政策には疑問を感じます。侵略され虐殺された人たち、奴隷として連行された人たち、流れ込む文明に戸惑いつつ生活が変わっていく人たちについて話を深めつつ、私たちも新しい視点に気づかされたように思います。4月例会では「先住民」という問題について、より深く話しあえればと思っています。

 参考資料

『ちいさなりょうし タギカーク』V.グロツェル G.スネギリョフ再話 

アジア・エスキモーの昔話

松谷さやか文 高頭祥八画 福音館書店

1997年11月こどものとも世界昔ばなしの旅第1刷

『北極地方のエスキモー』先住民族シリーズ① 河津千代 リブリオ出版 1989年4月初版

『エスキモーになった日本人』大島育雄 文芸春秋 1989年8月第1刷

『極夜の探検』角幡唯介文 山村浩二絵 福音館書店 

たくさんのふしぎ2020年2月号(第419号)

  『極北の大地の深い夏』宮崎明子 岩波書店 2005年6月28日 第1刷



参考までに

『精霊の木』上橋菜穂子作(偕成社)あとがきから

 この作品を上橋さんが書かれたのは大学院生で沖縄のフィールドワークを体験していた。その体験がこの作品を生み出すイメージとつながっているのだろう。沖縄も日本という国に侵略されている。

 「世界じゅうに散在する、〈精霊を信じる人びと〉の歴史は、あまり知られていません。現在〈歴史〉として知られているものは、彼らを支配した側が書いた、〈歴史〉であるせいかもしれません。

 かがやかしい、勇気と熱意の大航海時代。新大陸の発見!―けれども、その〈発見された〉人びとが、どれだけ悲惨な歴史をたどったか、いまもなお、どんなにくるしい状況の中にいるかを知っている人は、おおくはないでしょう。

 (中略)西部劇が、世界じゅうの人びとにうえつけたイメージのなんと強力なこと!本当の歴史を知った人ならきっと、そんな映画をつくれる人の心に、いいしれぬ恐怖を感じるでしょう。」


 上橋さんはエッセイで『イシ 二つの世界を生きたインディアンの物語』という本にふれ、ヤヒ族最後の一人になったイシについて「自分の伝統文化を守って、ずっとひとりぼっちで生きろと誰が言えるでしょう。ふたつの世界で生きていくということはけっしてラクなことではないし、スパッと割り切れるほど、単純な話でもありません。」と書いています。

11月例会報告   2019/11/24


 参加者は4名で さくまゆみこさんの本を読み合いました。


「おいしそうなバレエ」 ジェイムズ・マーシャル:文 モーリス・センダック:絵 

さくまゆみこ:訳  徳間書店


 センダックが亡くなった友だちの文章に絵を描き仕上げた絵本である。おおかみがぶたに出会い、食べようとして劇場に入る。そしてバレエを楽しみ、最初の目的を忘れてしまっている。おおかみは周りにもたくさんいるぶたには目を向けず、どうしてプリマドンナのぶたを食べようとしたのか?おおかみの家の大家さんはなぜ人間なのか?などを話し合いつつ、絵を読むことを楽しんだ。特に絵に描き込まれている文字の面白さに、訳をされたさくまさんも一部原文のままにしている。センダックの遊び心を読み手も楽しみたい。


「ひとりひとりのやさしさ」  ジャクリーン・ウッドソン:文 E・B・ルイス:絵

さくまゆみこ:訳 BL出版



 主人公のわたしクローイはアフリカ系のアメリカ人と思われる。彼女のクラスにマヤが転入してくる。彼女への無視という行動とそれを悔やむ姿が描かれている。今回クローイ自身の置かれた立場に目を向けた。「そのとし、わたしのなかよしは、ケンドラとソフィーだった」と書かれている。高学年の女子に見られるグループ、そこになんとか入れてもらいながらグループのメンバーの顔色をうかがいながら過ごすクローイの思いが伝わる。そのクローイから見たマヤは一人でもいられる強さを持っており、それがうらやましかったのではないだろうか。担任の先生からの話に対してマヤへの行動への痛みを感じない「友だち」と違ってクローイは何を思っていたのか。単にマヤへのいじめだけではなく、クローイ自身の置かれた立場も思うと「後悔」というには複雑な思いだったと想像できる。単にいじめをダメというだけではないものを感じて欲しい絵本だ。


「エンザロ村のかまど」

 さくまゆみこ:文 沢田としき:絵   福音館書店


月刊たくさんのふしぎ(2004年)たくさんのふしぎ傑作集(2009年)

 アフリカでかまどやぞうりの作り方を教え、生活の支援をする話が書かれている。日本の遠野の知恵がアフリカに渡り、現地の人が自分たちで継続していけるよう工夫する様子に「支援」について考えさせられた。上から何かを与えるのではなく、現地の人たちが活かしていけるものを伝えている。学校の子どもたちがぞうり作りに興味を持ち、学校で作り始めた様子は楽しく見えた。絵を読むことも楽しく、現地の人たちの暮らしが伝わる。


単行本「風をつかまえた少年」 田口俊樹:訳 文藝春秋社

絵本「風をつかまえたウィリアム」 さくまゆみこ:訳 さ・え・ら書房


 ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー:両書の著者

 絵本ではウィリアムのあきらめない気持ちとあるもので工夫する力が描かれている。単行本では詳細な事実が書かれている。現地での貧富の差や腐敗した政治家の姿が今の日本とかぶってくる。その中で生活を変えようとするウィリアムを支えるのは友だちとアメリカの支援でできた図書館とそこにいる司書だ。3冊の本と廃棄場の物で風力発電機を作ったウィリアムは14歳。日本の中学生との違いについて考えさせられた。また単行本や映画に描かれたマラウイの現実をおとなには知ってもらいたいと思う。


上記2冊から子どもたちの学ぶことへの意欲が感じられ、学ぶことが生活の向上につながっている。子どもは本来学ぶことが好きだと思うが、日本の子どもたちが学校で学ぶ楽しさを感じられなくなったのはなぜだろう。またその場にある物を活かす力にも驚かされる。後進国・発展途上国と言われることもあるが、私たちよりも持っているものの豊かさに触れた。


「ホーキング博士のスペースアドベンチャー」シリーズ 

スティーブン・ホーキング、ルーシー・ホーキング:著 さくまゆみこ:訳  岩崎書店


残念ながらレポートはなかったが、冒険物としてのおもしろさと、専門知識の深さがあるからこそ子どもに分かりやすく書かれた宇宙の知識が興味深く読めたことを確認した。次回の例会で簡単なレポート報告の予定。